アベノフノレガシー

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「円安がとんでもないことになって来たな」 「ここ一年で30円以上下落だ」 「で、円安を防ごうと政府が為替介入したけど、意味ないよな」 「って言うか矛盾してる」 「だよな。量的緩和と利上げしない方針を続ける金融政策が円売りを齎しているのにその大元の火種に手を付けることなく姑息にも為替市場の円買いだけで円安を食い止めようしてる訳だから、ま、児戯に等しいことだ」  円安を防ぐには円を買わなければならない。円を買う為にはドルを売らなければならない。そこで政府は円買いドル売りの為替介入をした。ところが、ここに落とし穴があり、日本は自国通貨建てだから介入資金が幾らでもあるが、自国の通貨を買うには外貨のドルを売る用意をしなければならない。外貨準備だ。外貨準備のドルとは現金ではなくて米国債。ということは米国債を一旦売って現金のドルを調達しなければならないが、米国債を売ると、マーケットで米国債が増える。増えると米国債の価格が下がる。下がると金利が価格と逆数になっているから上がる。したがって日本が円買いドル売りをすると米国の金利が上がる。そして自業自得で異次元金融緩和の結果、各民間金融機関の日銀当座預金口座に大量の日本国債を眠らせてしまった日銀は、自ら資金を創出できるので資金繰り倒産は有り得ず、利上げしても債務超過に陥ることはないものの、利払いが上がってほぼほぼデフォルト状態になって円の信用に関わる事になるし、1800万人くらい借りている住宅ローンも上がって不動産価格が大暴落し、破産者が続出して大不況になるので利上げしない方針に変わりない為、金利差拡大して金利が高いドルの方に買い手が集まり、円安が進むという寸法だ。 「ほんの一時、ちょっとだけ円高になったけど、直ぐに戻って更に円安」 「円安による輸入インフレは半端ねえことになるぞ」  輸入物価指数が10%上がると消費者物価指数が1%上がる。日本は輸入物価指数が30~40%上がっているので消費者物価指数が3~4パーセント上がる。その上、賃金上昇率より物価上昇率の方が高いので実質賃金が更に落ち込む。事実上、狂乱物価だ。 「原油価格を中心とした輸入価格の高騰は響くぜ」 「何せ、配達するにも物を作るにも原油を使うから更なる物価高騰は避けられない」 「同じインフレでもアメリカは賃金が高いからデマンドプル型で良いけど、日本は賃金が低いからコストプッシュ型で駄目だね」 「しかし、安部と黒田のアホコンビが良く言ってたよな。円安は日本経済にプラスだって」 「アベノミクスによる異次元金融緩和の付けが回って今の円安輸入インフレとコストプッシュインフレを招いたのにな」 「輸出で儲けていた時代はとっくの昔に終わったのにな」 「異次元金融緩和で円安誘導することで集票組織である経団連の大手輸出メーカーを儲けさせてたことがいけなかったんだ」 「円安で自動的に儲かるからその状態にあぐらを掻いて技術開発したり新しいビジネスモデルを開拓したりしてこなかった所為で日本経済が弱体化したもんな」 「で、古い産業の儘で輸出が減ったから円安進行によって潤うのは一握りの大企業だけで日本企業の大半を占める中小零細企業が壊滅的になってしまった」 「そもそも中小零細企業は従業員が少なくて生産性が低いから輸出出来る規模がない] 「生産性が低いのは従業員が少ないだけじゃなくて効率が悪いからだ」 「DXが進まなくてアナログなやり方を脱し切れないから無駄な工程が多いんだ」 「殊に日本のIT産業は酷くてさ、大手数社のITゼネコンが寡頭支配してて既得権益を守ろうと仕事と利益を独占して技術を隠蔽してるから企業同士が競争しなくて技術革新が生まれないのがいけないんだ」 「このIT化が進む現代において技術革新なくして経済の発展はない」 「そして賃金の上昇もない」 「それに3kだから日本人がやりたがらない農林水産建築土木畜産鉱業などの人手不足を東南アジア諸国の外国人技能実習生で補ってたけど、彼らも他の分野の専門家も日本にメリットを感じなくなって来なくなるぞ」 「賃金低い上に円安だからな」 「だから俺たち寿司職人も日本にいるより海外に出た方が断然儲かるし、ラーメン屋とかも海外で商売した方が断然儲かるからやる気のある優秀な人材が日本から流出するな」 「日本にとってダブルパンチやな」 「小耳に挟んだんだけど、寿司職人はオーストラリアなら年収3000万、アメリカなら7000万も稼げるっていう話だぜ」 「少なくとも今の俺たちの年収の10倍になるな」 「めっちゃすげえよな、こうなりゃあ寿司職人を海外へ売り出す専門学校があるらしいから入学しよう」 「そうだな。金融だけでなく財政も外交も官僚機構もコロナ感染対策も民意も何もかも安部の負のレガシーによってダメダメになってしまった日本にいてもしょうがないからな」  斯くして二人は何年も世話になった親方の元を離れる仕儀と相成った。  
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