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女の子は嬉しそうに親のところへ戻って行った。
「さて、次行くか」
「輝弘様、次は輝弘様が行きたい場所を選んでください」
「オレ? オレはいいよ、風吹さんが行きたいところ選んで」
「輝弘様も行きたい場所があるんじゃないですか?」
そういえば、風吹さんのことばかり考えてて自分のことは考えていなかったな。
見たい屋台か……。
立ち並ぶ屋台を見渡す。ふと、子供の頃の記憶が頭をよぎった。
母親の手を握りながら屋台を歩く情景が目に浮かぶ。子供の自分は、母親から離れないように手をしっかり繋ぎ、出店をキョロキョロと見渡している。すると、一店の店に目が止まり、歩みも止まった。
その店は……。
「お好み焼き」
「お好み焼きですか?」
言葉に出していたのか、風吹さんに復唱された。
オレは手で口元を抑えて、「あぁ」とぶっきらぼうに答えた。
風吹さんは優しい笑みを浮かべると、オレの手を繋いだ。
「じゃあ、お好み焼き屋に行きましょう!」
風吹さんに導かれるままオレは、風吹さんと一緒にお好み焼き屋へ向かった。
お好み焼きを二人分買い、花火が見られる場所へ移動した。他の人たちも同じことを考えているのかワラワラと移動し始めている。
「どこで見ましょうか?」
「そうだなぁ」
花火は河川敷で打ち上がる。みんな河川敷へと向かうはずだから、河川敷以外の場所が好ましい。だけど、河川敷以外で綺麗に花火が見られる場所はどこだろうか。
どこか見晴らしのいい場所は……。
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