第四夜

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店頭に並んである林檎飴を店主が選んでいると、「オヤジ! 林檎飴の追加だ!」店主のうしろから若い男が林檎飴を二つ持って現れた。どうやら、林檎飴作りはうしろでやっているようだ。 「おっ! お兄さん達運がいいな!」 若い男から林檎飴を受け取る。 「出来立ての林檎飴だ。一番美味い時に買えて良かったな!」 「ありがとうございます!」 店主から林檎飴を貰い、風吹さんはとびきりの笑顔を見せた。 「んっ……可愛っ」 「あ゛っ?」 店主のうしろの方から不穏な言葉が聞こえ、若い男を静かに睨みつけた。 若い男はオレの睨みに気付き、慌てて林檎飴作りへ戻って行った。 店主へ林檎飴の料金を払い、店をあとにした。 嬉々として風吹さんは林檎飴を歩きながら食べた。 「美味しいか?」 食べるの必死でコクコクと首を縦に振った。 「そっか、良かった」 オレも林檎飴にかじりついた。 林檎飴を食べ終わる頃、風吹さんは次の出店に目を向けていた。何の出店かオレも目を向ける。 「金魚掬いか?」 金魚掬いをやっている人はおらず、店主が暇そうにあくびをしていた。 「俺、金魚掬いやった記憶がなくて」 「わかった、やってみようか」 風吹さんにどっちが多く金魚を釣れるか勝負を仕掛けてみたもも……。本当に金魚掬いをやったのは初めてなのか? 「わぁ! すげー!」 「おにぃさんたくさん釣ってる!」 「こっちの兄ちゃん、一匹も釣れてなーい!」 いつの間にかガヤまで増えてて、風吹さんの大量金魚に子供たちは興奮していた。 店主もさっきまで眠た気だったのに、風吹さんの金魚掬いで目が覚めたようだ。 「あ、(あん)ちゃん。そろそろやめにしねぇか?」 「え? ポイが破けたら終わりですよね? まだ破けてないですよ?」 たしかに風吹さんのポイは破けてはいない。 水に浸けているはずなのに不焼けているすらない。 風吹さんのポイだけ特殊な素材ではないのか? すら思えてしまう。 「そうだよ! まだ破けてないよ!」 「そうだ! そうだ!」
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