第四夜

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「ん〜でもよぉ〜」 金魚屋の店主がオレに助け舟を求める。オレは風吹さんへ視線を向ける。風吹さんは、真剣な顔でまた一匹、金魚を掬い上げた。 これで十六匹目の金魚となる。 金魚を入れるお椀も三個目に突入した。ポイは変わらず、破けてはいない。 一体、どこを使って金魚を掬っているのか不明だ。 観客の子ども達もワァワァと歓声を上げている。オレは店主へ苦笑いを浮かべて、『無理』と口を動かした。店主は落胆して、「頼むよー勘弁してくれー」と嘆きの声を上げたのだった。 すると、十七匹目を掬い上げた時、ポイの真ん中がピリッと破けた。掬われた金魚はバタバタと水へと帰った。 「破けた……」 風吹さんがあっけらかんな口調で言った。それが合図だったかのように、店主が「やったー! 良かったー! 全部持っていかれるかと思った! よっしゃー!」と、バンザーイを連呼する。 子ども達はがっくりと肩を落とした。 「惜しかったなー」 「全部掬って欲しかったな」 「でもさ、十六匹も掬ったんだよ? 凄いよ!」 風吹さんの周りに子ども達が集まり、勝手に慰めの会が始まった。風吹さんは子どもらの言葉に真摯に耳を傾けていた。 「店主」 「ん?」 「掬った金魚何匹か返すよ。いいよな? 風吹さん」 「ええ、少し取りすぎちゃったので……一匹だけ貰いますね」 大量の金魚をタライに戻した。子供達は残念な声を上げていた。 店主は戻ってきた金魚を見て、嬉し涙を流していた。 「ありがとう! 兄ちゃん! あ、金魚袋に入れてやるな」 店主は涙を拭いながら、一匹の金魚を透明な袋に入れてくれた。ふよふよと金魚は狭い水の中を泳いでいる。 金魚を受け取り、風吹さんは店主へ「ありがとう」と、お礼を言った。 風吹さんの金魚掬いを見ていた子ども達の中に小さな女の子もいた。風吹さんの持っている金魚を羨ましそうに見ている。 「はい、あげるよ」 「えっ? いいの?」 「うん、その代わり大切に育ててね」 女の子は明るい笑顔を浮かべて、金魚を貰い受けた。 「うん! 大事にするね! ありがとう、お兄さん!」
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