10「梅切らぬバカ」

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10「梅切らぬバカ」

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」 と言われるが、毎年庭の梅の枝切りは千鳥の弟が引き受けていた。しかし今年は、千鳥が請け負うことになる。 「小春さん、ここで良いの?」 「そうそう、その節の先ね」 「分かったー」 脚立を使っても届かない場所は 幹に足をかけて切っていた時だった。 バキバキバキ--- 重みで枝が折れてしまい 塀の外側に落ちてしまった。 「千鳥ちゃん、大丈夫?」 「わぁ、びっくりしたー!」 「とりあえず、一度降りて」 「うん、でも小春さん、外の道に枝が落ちちゃったよ」 「気をつけて降りてて。私が見てくるから」 小春が塀の外へ向かうと 「焦ったー!」と声がした。 恐る恐る木戸を開けて外を覗くと 結構な太さの枝が落ちていて、 自転車が倒れている。 横には青年が、枝を道の隅に移動させようとしていた。 慌てて小春は、そちらに向かい 「ごめんなさいね。枝にぶつかりましたか?お怪我ないですか?」 「あ、いや、大したことは」 と小春に向けたその人の額には 赤い傷が見えた。 「やだ!どうしましょ。大変!手当てしましょう。ごめんなさいね。千鳥ちゃん。ちょっと来て!」
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