30 「お祝い」

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「えーそれではお時間になりましたので、始めたいと思います」 素敵なピアノ音楽が流れてきて 奥の方から、女性が出てきた。 花びらが舞う映像が映され、そこから出てきたのは、純白のウエディングドレスをまとった小春だった。 凛が仕事先の衣装部から借り受け、自分担当のメイクさんも協力してくれて、美しい花嫁姿になって現れた小春。 千登勢もつい、立ち上がり見とれていた。 はにかみながら、千登勢の隣に立つ小春に。千登勢はうっすら涙ぐむ。 「千登勢さん、驚かせてごめんなさい。サプライズにしたくて、内緒にしてました。庭の完成祝いと同時にお二人の結婚式をプレゼントさせてください」 千草がそう言うと、奥からゾロゾロ親族や木杉ガーデンの従業員達も拍手しながら出てきて、口々に「おめでとうございます」との言葉をかけてくれた。 駿太郎と野崎も二人で並んで裏方作業をしながら、小春達を見守る。 愁と笹内で作ったウエディングケーキにナイフを入れて、皆で乾杯をした。 あの日の千登勢と小春の会話を聞いていた愁が みんなに声かけして、2人の結婚式を企画したのだった。 千登勢と小春の姿に、千鳥も凛も【恋はしない、結婚しない】の気持ちが揺らぐ。 「本当に素敵な二人です。もしも運命の出会いってあるんなら、こういう事なんだろうな」 駿太郎が言うと 「本当だね。羨ましいと思うよ」 野崎もそう答えた。 皆からの祝福の言葉がそれぞれ送られて、最後に千登勢が挨拶をした。 「今日はみんな祝ってくれて本当にありがとう。びっくりしたよ。 最初はこんな歳になって、結婚式などやるのは恥ずかしい事かと思ったが、夢だった小春さんの花嫁姿を目の前にして、生きていて本当に良かったと思ったよ。小春さん、本当に綺麗だよ」 「私だってこの歳でこんな素敵にしてもらえるなんて、夢にも思いませんでした。ありがとうございます」小春もそう答えた。 ヒューヒューと皆が囃し立てる中 千登勢は「私らの年齢から考えれば、この幸せな時間も、そう多くないかもしれない。でも、永遠の別れでお互い目の前に居なくなったとしても、こうした思い出も作れたし、心はずっと繋がっていると思えるなら幸せだと思えるようになった。心からお礼を申し上げます」 たくさんの拍手に、全員が笑顔で溢れる式となった。
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