31「 梅にうぐいす」

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31「 梅にうぐいす」

「久しぶりだなあ」 春翔は米村家の門の前で呟く。 「結婚式以来だもんね」 マキも答える。 そこには春翔と赤ん坊を抱くマキがいた。 千草の夢であった介護施設も完成。 今日は、春翔とマキ、そして2人の間に授かった赤ん坊の優梅(ゆめ)が米村家にやってきた。 マキの前夫との離婚の原因は、跡取りの欲しい夫や家族だったが、マキは流産を繰り返し子供を授かることが出来ず、母になることは諦めていた。「子どもが出来るかどうかは、自然な流れ。僕はマキさんと、ずっと一緒に居たいんです」との春翔からのプロポーズを受け入れた。 千登勢と小春の結婚式で、集まっていた春翔の親族にもマキを紹介する事が出来、籍を入れた。 それから間も無く、思いもかけず妊娠。小さな命は皆に祝福された。 近々春翔は、和歌山での修行を終え、木杉ガーデンの副社長として東京に戻ることになる。 「優梅ちゃん。ようこそ、さあ入って入って」 小春は玄関に迎え入れた。 「後でひと段落したら、千草もこっちに来ると思うから」 米村家の居間に通される。そこには千登勢も待っていた。 「じいちゃん、小春さん、ご無沙汰です」 「おお、お疲れさん。マキさんもようこそ」 「お久しぶりです。お会いできて嬉しいです。優梅も連れてこれて良かったです」 小春も優梅の顔を見ながら 「いつもスマホで見せてもらってたけど、やっぱり可愛いわぁ。こちらにはいつ頃、引っ越してくるの?」 小春が聞くと 「あと半年くらいで。向こうの任されていた仕事に区切りがつくんで 戻れそうです」 「そうなのね。落ち着くまでは大変でしょうが、出来ることはお手伝い するので遠路なく言ってね。マキさんもね」 「ありがとうございます。よろしくお願いします」 マキも優梅を抱きながら頭を下げた。 「まあ、立ってないで座りなさい」千登勢が促した。 「梅番茶でいいかしら?」小春はミニキッチンから声をかける。 すると春翔は「マキは和歌山の生まれですから、梅好きです」 「はい。大好きです」マキも答える。 「そうよね。本場だもんね」小春が言うと優梅も声をあげた。 「あら、優梅ちゃんも?」小春は笑いながら言うと 「なんと言っても梅干し大好きな2人の娘ですから、梅干し姫です」春翔も言いながら笑う。 「では、初代梅干し大将は、私だな」と千登勢が言うので 「え?あのおじいさんがジョークいう人になったんですね!」 気難しいと思っていた春翔には驚きだった。 「結婚式でも言っただろ?木杉千登勢は生まれ変わって小春さんにプロポーズしたんだからな」 「そうだね」春翔は微笑む。 「素敵でした。結婚式でも思いましたが、お二人は私の理想です」 マキも言うと全員の笑顔に、優梅(ゆめ) も笑った。 「あらあらいいお顔」小春が優梅の手を握る。 ふと庭に目をやった春翔が 「ああ、梅、もうすぐ花咲きそうですね」呟く。 「春も近いな」千登勢が言えば 「実がたくさん出来るといいわね」と小春も言った。
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