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居間でくつろいでいると
千草もやってきた。
「わぁ、優梅ちゃん!春翔くんもマキさんも
ようこそ!お疲れ様。抱かせて抱かせて」
「ご無沙汰しておりました。千草さんも変わらずお元気そうですね」
春翔も優梅を、千草に預けながら言った。
「そろそろですね」そう言って小春はテレビをつけた。
「お、出て来た」全員がテレビに注目する。
画面には【速報!木杉 凛・結婚記者会見】とのテロップと共に、凛の顔が映っている。
「凛のやつ緊張しているな」
千登勢が笑顔で見る。
「綺麗ねえ。元々も綺麗だけど、結婚する前って本当に綺麗よね」
小春も微笑む。
「優梅も、テレビに釘付けになってます」
マキも言うと皆が笑った。
「本日は私事のために、お集まり下さいましてありがとうございます。
大袈裟にせず、文書での発表にする事も出来たのですが、やはり今まで
応援して下さったファンの皆様、支えて下さった周りの皆様に
きちんとお礼と共に祝って頂けたらと思い、このような機会をご用意頂きました、関係者の方々にもお礼申し上げます」
凛は、明るい色のワンピースで立ち上がり深々と頭を下げた。
仕事先からスマホで、その模様を見ていた千鳥も
「きゃあ。凛ちゃん可愛いって言うか美人が倍増だわ!」
いつしか凛のことも、“ちゃん“つけになる程親しくなった千鳥。
隣で見ていた野崎も「いやあ。いいねえ」とニコニコ見ている。
野崎は、千登勢と小春の結婚式がきっかけで、木杉ガーデンとのコラボ仕事が増え、1年前に木杉ガーデン出資で映像の会社を立ち上げた。
そしてそこに、千鳥にアシスタントとして働いて欲しいと野崎から
の要望に応える形で千鳥は転職した。
今日は映像仕事の準備中に、凛の結婚会見を見ていた。
「にしても、堂々としてる凛ちゃんに比べて、隣はガキガチだな」
野崎は千鳥の隣で笑う。
「仕方ないよ。今まで裏方でしか、こういう場所にいたことないんだから」
「だよな。俺たちと同じもんだもん。俺でも、もし同じ立場なら吐きそうな位緊張してるな」
「本当に。良く会見の了解したね」
「そうだよね」
「まあ、凛ちゃんの意見に反対しないし出来ないんじゃない」
「惚れた弱味だよね」
「うんうん。頑張れ!宮下くん!」
テレビ画面の中には、凛の隣で頭を下げた後、顔を上げる
少し頬の赤い宮下駿太郎がいた。
凛の芸能活動を陰に陽に、支えて続けた駿太郎は
凛にとってかけがえの無い人と、いつしかなっていたのだった。
駿太郎もまた、凛の本音に触れて、彼女を一生支えていきたいと思うようになった。
結婚報告の記者会見は行うが、披露宴はごく身内で行う事になっていた。
木杉ガーデンのグリーンモデルルームを利用して、小さな披露宴を行う事にした。
そこで野崎たちの映像を使うための準備しながら、二人で
会見を見ていたのだった。
凛は女優とはいえ、大袈裟な事は避けたいと思っていたのでマスコミも
シャットアウトして手作りのものにする。
千登勢と小春の時のように。
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