14 「名前の由来」

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14 「名前の由来」

その晩 進路カードを母親の千草に 渡しながら昼間の出来事を 報告した。 「ねえ。お母さんは小春さんの初恋の話、知ってた?」 「あ、千登勢さんの話?」 「そう、私初めて聞いたから」 「お母さんもね、千鳥が生まれる少し前かなぁ?赤ちゃんの名前を決めるのに、小春さんに私の“千草“って名前は誰が付けたの?って聞いたのよ」 「うん」 「そうしたら、千登勢さんの話をしてくれたの」 「へえ。で、どうしてなの?」 「千登勢さんの『千』の字を使いたくて、小春さん。生まれた私に『千草』って名付けたんだって」 「え〜!おじいちゃん何にも言わなかったの?」 「そりゃ、おじいちゃんには内緒よ。たまたまおじいちゃんのお母さんが【セン】って言うから、そこから貰いましたって言ったらしいわよ」 「やるなぁ、小春さん」 「え?じゃあお母さんは、なんで私まで『千』を付けたの?」 「うーん。小春さんの情熱にほだされて?」 「なんか分かる」 「それだけじゃないのよ。お父さんにプロポーズされたのは、千鳥ヶ淵でお花見ボートに乗っていた時だったのもあるよ」 「え。その話も初めて聞いた」 「お母さんの恋バナ聞く?」 「長くなりそうだから、今度でお願いします」 「ははは」 初恋の人の名前を、娘につけちゃう 小春さんに、千鳥もそんな恋が出来るのだろうか?思った時に浮かんだのは 桜井の顔だった。 「で、千鳥、カードはどうするの?」 「そこなんだよね。小春さんに相談したら、花嫁修行する?って言われちゃった。そしてそのまま恋バナ」 「そう、千鳥は今、部活やってるじゃない?そこには興味無いの?」 「別にやりたくて入ったわけでも無いし。まぁ照明係は面白いっちゃ面白いけど」 「千鳥が好きなものってなんだろね」 また振り出しに戻ってしまった。
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