17 「春翔・梅干し好きになった理由」

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すでに梅干し好きになっていた幼稚園児の僕は 勝手にその瓶に手を突っ込み 梅干しを食べてしまった。 それがこの上なく美味しくて 祖母の漬けたものとはまた違う風味だった。 あまりの美味しさに、もう一つ摘もうとした時、祖父に見つかってしまった。 「春翔、何やってる!」 大声で怒鳴る祖父は 僕の腕を掴んで、本棚の隅から引きずり出した。 思った以上の叱られ様に 僕は「ごめんなさい」と言いながら 泣き出してしまった。 後にも先にもこんなに怒った祖父を見た事はなかった。 ちょうど祖母が帰ってきた時で 慌てて祖母に泣きついた。 事情の分からない祖母は 「なんでこんなに泣いてるの? 春ちゃんが何をしたの?」 祖父に問い詰めたが 「勝手に触っていけない物を 触ったからだ」とだけ伝えた。 その時の記憶は、そこで途切れているが あの時食べた梅干しの 微かな記憶や味が僕の頭に残っている。
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