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すでに梅干し好きになっていた幼稚園児の僕は
勝手にその瓶に手を突っ込み
梅干しを食べてしまった。
それがこの上なく美味しくて
祖母の漬けたものとはまた違う風味だった。
あまりの美味しさに、もう一つ摘もうとした時、祖父に見つかってしまった。
「春翔、何やってる!」
大声で怒鳴る祖父は
僕の腕を掴んで、本棚の隅から引きずり出した。
思った以上の叱られ様に
僕は「ごめんなさい」と言いながら
泣き出してしまった。
後にも先にもこんなに怒った祖父を見た事はなかった。
ちょうど祖母が帰ってきた時で
慌てて祖母に泣きついた。
事情の分からない祖母は
「なんでこんなに泣いてるの?
春ちゃんが何をしたの?」
祖父に問い詰めたが
「勝手に触っていけない物を
触ったからだ」とだけ伝えた。
その時の記憶は、そこで途切れているが
あの時食べた梅干しの
微かな記憶や味が僕の頭に残っている。
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