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凛はコーヒーフロートの
バニラアイスと小豆を
スプーンで混ぜながら言った。
「じゃあ、春くん」
「なに?」
「私の願い聞いてくれたら
他の大学とか考える」
「なに?どういう事?」
ストローでコーヒーを一口吸い込んだ凛。
「春くん。私の彼氏になって。
そうしたら他の大学でも良い」
豆鉄砲食らった顔って
こんな顔なんだと思うくらい
驚いた顔で凛を見つめる春翔だった。
小声ではあっても、静かな店内に
凛の声は嫌でも耳に入ってしまう。
マスターも聞こえないふりをしていても、トマトをスライスしながら横目で凛達のテーブルに目を向けてしまう。
サンドイッチを注文した
小春は、意味もなく
近くにあったグリーンに手を伸ばしてみた。
春翔は微笑みながら
「なに冗談言ってんだよ。自分の人生なんだよ。もっと考えなきゃ」
その時凛の目からポロッと
滴るものが光る。
春翔は慌てるが、声も出なかった。
「そう、冗談。花粉症かな?目が痒くて涙出た。ここのカフェ、アレルギーの葉っぱあるのかな?」
ストローで一気飲みして凛は立ち上がる。
「凛」
春翔は凛の手を掴もうとしたが
するりと抜けて
「ゴチでいいよね!じゃあね」
と言って店の出口へ走って行く凛だった。
立ち尽くす春翔。
マスターも小春も
目を合わせて黙っている。
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