20 「2人の距離」

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20 「2人の距離」

進路指導室のやり取りは 演劇部で活躍してきた凛の通る声のせいで 廊下まで丸聞こえだった。 『凛さんが振られた?あんなに美人な人を振るなんて一体どんな男なんだろう?しかもそれをバネにしちゃう彼女もすごい。それに比べて私は……』 この日もはっきりと答えが出せず モヤモヤしたまま、面談は終わった。 進路がはっきりしないものはクラスでも、もう数人となっていた。 千鳥もいよいよ焦ってきた。 進学するにしても、準備が間に合わなくなる。 母は、好きにして良いよって言うけど 自由って意外に大変だ。 親が決めたことに従うしか無い時代の 小春さんからしたら、なんて贅沢な悩みなんだろうと思うけど。 私は私で、切実なんだ。
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