20 「2人の距離」

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入学式には、入院していて 出席できなかった。 怪我は治ったとしても 趣味程度なら良いが 本気で野球を続けるのは 難しいと医者からも告げられた。 「バチが当たったんだ。 スポーツ推薦にしなかったのは もし怪我でもしたらって 考えてしまったから……。 本気ならそんな事考えず ひたすら野球をやる為に 入学するべきだった」 駿太郎はそんな思いを抱えながら 入学式1週間後に登校する事が出来た。 校庭の先の野球場では 野球部の練習も既に始まり 窓から聞こえるかけ声やバットに当たる球の音。 グローブやミットに球が収まる音。 自分がそこに居られない事に 居た堪れなくなる。 強豪校なので、当然昼休みも 野球場では練習をする部員たち。 いつしか昼休みも、弁当を食べた後は 机に突っ伏する駿太郎だった。 イヤホンで大きな声で音楽を聴いて 野球部の音をかき消していた。
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