21 「 三人の距離」

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21 「 三人の距離」

千鳥が部屋で宿題をしていると 「千鳥ちゃん、良いかしら?」と 小春が襖越しに声を掛けてきた。 「いいよ。何?小春さん」 「あのね、今度の金曜日の夜 何か用事ある?」 「え?別に無いけど」 「そう、実はね。春翔くんから 大学のゼミのイベントにお呼ばれしたの」 「春翔くんって桜井さん?」 「そう」 小春が桜井君ではなくて、いつの間にか【春翔くん】と呼んでいることに驚いたし、その名前を聞かされてドキリとしている千鳥だった。 「小春さん、デートに誘われたんだねえ。すごい」 「何言ってるのよ。おばあちゃん子だったそうだから、亡くなったおばあちゃん代わりなんじゃ無いの?」 「そんな情報まで知ってるの?」 「うふふ。あれから何度か『あけぼの』で会ったり、この前はLINE交換したんだけどね」 「ちょ、ちょっとそれ、なんか恋人同士みたいじゃない」 千鳥は尚更驚きつつ、小春が最近生き生きとしているのは 桜井くんのおかげと知った。 「それでね、千鳥ちゃんも一緒に行かない?夜だから足元危ないし、私も一人は不安だし」 「行くよ、行く行く。危ないし、何より桜井さんと会えるし……」 とつい、話してしまった千鳥。 「千鳥ちゃんも、春翔くんファン?」 「あ、うんうん、フ、ファン。 そう、推し。かっこいいもん」 「そうよねー。じゃあ一緒に行きましょう。春翔くんにもLINE送っておくわ」 とても70代の女性には聞こえないセリフ。そんな小春を羨ましく思う千鳥は、春翔と会える楽しみで 心がじんわり温かくなった。
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