10人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
5 「手当て」
「千登勢!」万次郎の声がした。
「おい、大丈夫か?はなみずきは気をつけろと言ったじゃないか!」
万次郎の言葉に小春達も駆けつけると、はなみずきの木の枝と千登勢が横たわっていた。
千登勢は、足首を怪我してしまったようだ。
小春の母は
「万次郎さん、とりあえずそこの部屋に千登勢くんを運んでください」
と万次郎に頼んだ。
「奥様、申し訳ありません」
「良いのよ。小春、手当してあげて。
もう今日は終わらせていいわ。連れて帰るまで、休ませてやってください」
万次郎は千登勢の汚れた作業着を脱がせて、用意してくれた縁側近くの和室に運び込み途中になってる仕事に戻った。
冷やした手拭いはすでに出来ていたので、小春は横になる千登勢の元へ急いだ。
「大丈夫ですか?どこが痛いですか?」
「お嬢さん、すみません。俺がヘマしたばかりに」
「いいんですよ。この辺ですか?」
「俺が自分でやりますから」
と体を起こす千登勢だったが、腕や脇にも打撲があるようですぐ動けなかった。
小春は千登勢の逞しい背中を拭く。痛めたであろう足首に、手拭いを乗せた。
最初のコメントを投稿しよう!