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「では、そろそろお暇いたします」
小春が玄関へ向かうと
見送りに来た春月は、小春に言った。
「父がここ最近、すごく明るくなって
幸せそうなんです。小春さんのおかげです。いつでも来てくださいね」
「ありがとうございます。そう言って頂いて、私も嬉しいわ」
「息子の春翔がお世話にもなってましたものね」
「いえいえ、こちらがお世話になっていたんですから、こんなおばあちゃんの相手をしてもらえて」
そして、春月が打ち明けてくれた。
「小春さん.私ね。自分の名前の由来を
実は母から聞いていたんです。父の初恋の人は『春』がつく名前で、本当は父が結婚したかった人だったって。
初めて聞いた時は、母がどうして子供に、かつて父が好きだった人の名前をつけたのか、理解できませんでした。
母は、大好きだった父と結婚して、一緒に苦労できたことさえ、幸せだったって言っていました。だから、せめて父の1番好きだった人の名前をつけてあげたかったって聞いた時、これが母の愛の示し方なんだって思ったんです」
小春は「本当に、待子さんは心優しく、千登勢さんを愛していらしたんですね。素敵な奥様、お母様でしたね」
と言って涙ぐんだ。
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