28 「千草の夢」

1/5
前へ
/106ページ
次へ

28 「千草の夢」

『あけぼの』の閉店イベントで 千登勢の再会後、梅干し売り場に戻った小春は 片付けを手伝う千草に 「おかげさまで完売したわ」 「ほんと良かったわね」 小春は瓶に使ったラベルシールの残りを持って「なんて言っても千鳥ちゃんの、このラベルが可愛いからよね」 千草も眺めながら「あの子も意外と才能あるのね」と言うと 「意外とじゃ無いわよ。千鳥ちゃんは天才なの」 「はいはい。小春さんがそうやってフォローしてくれるから、良い子に育ちました」 二人でふふふ、はははと笑い合う。 「千草、コーヒー無料券使って、美味しいコーヒー頂いてくれば?少し休んでいきなさいな」 「ありがとう、実は朝から出ずっぱりでお昼も食べてないの」 「あら、だったらちょっとしたお菓子も置いてあるからつまんでいきなさい」 2人はコーヒーを淹れている 愁の所へ行き小春が声をかけた。 「マスター、うちの娘の千草です」 「母がお世話になってます」 「いえいえ、こちらこそ、お世話になってます。『あけぼの』のマドンナ、小春さんには。 さあ、コーヒーをどうぞ」そう言いながら 愁はコーヒーを注ぐ。 「もう、マスターは、いつもそうやってからかって」 三人で笑い合いながら、愁が言った。 「千草さん。初めてお会いしましたが、品のある雰囲気はお母様譲りですね」 千草は小春の顔を見ながら 「小春さん、私までお世辞言ってもらっちゃったわ」と、笑った。 愁は『purple cloud」の店舗カードを千草に渡し「僕、『あけぼの』を閉めた後はこちらでお世話になります。お近くにお越しの折には是非お寄りください」 「あ、ありがとうございます。あら? ここ、私の担当の利用者さんのお宅のそばですね。月一は伺うので、今度寄らせて頂きますね」 「はい、お待ちしております」 小春もニコニコと二人の会話を聞いていた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加