28 「千草の夢」

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あれから千草は、月一のローラン宅訪問時には『purple cloud』に必ず足を運ぶようになった。 また、休日に小春と一緒に訪れることもあり、すっかり常連となった。 『purple cloud』は、いわゆる純喫茶な店構えで、BGMはクラッシックだったりジャズや ハワイアン、時にはロックなども流れることがある。 マスターの笹内恭平は、元々大手音楽業界で働いていたが、この店の先代マスターの生き方に憧れ、そのマスターが高齢により引退するのを期に脱サラして店を継いだ。 客層も平日はリタイヤした人や主婦層、公園に面したテラス席は、ペットを連れた人や小さな子供連れのママ達が訪れ、住宅街ではあるが客足は絶えない店だった。 ランチを提供していた常連から、いわゆるボリューミーなカフェ飯よりも、やや少なめでうす味な和食テイスト。咀嚼のしやすい柔らかいおかずなど、年配の客のリクエストがあり、ランチメニューに加えてみた。 これがなかなか好評で、幼児を連れたママ達から離乳食にもなると、口コミで広まった。 愁もこうしたユニバーサルフードについて勉強するようになり、メニュー開発に千草の施設の利用者へ試食してもらい、意見を聞くようにもなった。
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