7 「花嫁」

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7 「花嫁」

その日も朝から、万次郎親子が 米村邸で手入れをしていた。 しかし、急な夕立で一旦手を休める事になった。 縁側で雨宿りして様子を見ていたが、途中で万次郎が居眠りをしてしまう。 そこにお茶を運んできた小春は 恐縮する千登勢に 「お疲れなのでしょうからそのままで」 と言い一人前のお茶をいれた。 「お嬢さん……。良ければ一緒に一服しませんか?」と千登勢が言った。 縁側に並んで座り 「……どうぞ」 菓子も差し出す小春は 目が合わせられずにいた。 「お嬢さん。いえ小春さん。親父から聞きました。来春には婿を取ると」 「はい。……父の決めた方です」 「その話を聞いたせいでしょうか? 俺、昨日夢を見たんです。小春さんの花嫁姿の」 「まぁ」 千登勢は少し息を吐き 大きく吸った。 「俺の……俺の嫁さんになっている夢でした」 「え?」思わず千登勢の顔を見た小春。 「親父と、ここの庭のゴミ拾いしかできない幼い頃から、ずっと俺は小春さんを見てきました」 雨音だけの一瞬の静謐な時。 「俺、心寄せていました。嫁さんに出来たらなんて、夢見てました。でもこの夢はきっと生まれ変わらないと叶いませんね」 千登勢は目を閉じたまま続けた。 「でもきっと生まれ変わっても、俺は小春さんを忘れません。その時は小春さんを嫁さんにする為、必ず迎えに参ります。約束させてください」 小春は、はらはらと涙をこぼした。 その時、空が光りすぐに雷が鳴った。 雷が大の苦手で大きな音に驚き 小春は千登勢に抱きついてしまった。
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