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会ってみると、千鳥の方は高校生の頃の自信なさげな弱々しい感じはなくなり控えめながら、芯のしっかりした女性に感じられた。
夢に向かって頑張る千鳥が、キラキラして見える。
凛は嫉妬すら感じた。
千鳥の成長ぶりをみるにつけ、凛自身は、成長どころか退化していると感じた。
もう、モデルも辞めてしまうか?
学校も退学しようか?そんな事をふと思ってしまった凛だった。
目的もなく何のための勉強かもわからないと、生きていくのさえつまらないと。
そんな思いを駿太郎に電話をしてみようと思った。
千鳥と会った話をしながら
つい口走った凛の言葉に
「木杉、何言ってんの?今までの努力無駄にするのかよ。あの猛勉強は?モデルだって、人から求められてできる仕事なんてそうそう無いんだぜ。
生きていく上で、めんどくさいとか大変だとか当たり前。もうちょっと頑張ってみなよ」
「宮下くんも大人だなぁ。私なんて甘えてんのかな?」
「まぁ、そうやって弱音吐ける奴もそれはそれで必要だよ。我慢はダメだ。オレはいつでも聞いてやるから」
「やっぱ大人だ、宮下くん」
「あははは、社会に出たのが少し早いだけの話さ。まだまだオレも父ちゃんに甘えて仕事してるよ」
「でも良い仕事できてるんでしょ?」
「まぁな、野球諦めた時に苦しい思いした分、人生の経験値あげた感じだな」
「人生の経験値か」
「ゲームのレベルアップと、変わらないけどな、ははは」
凛は駿太郎の言葉に、もう少し頑張ってみようと思えた。
その後、駿太郎からのLINEに
ある少女のSNSの書き込みのスクショが届いた。
それは受験に失敗し、絶望的になっていた少女が自殺しようとビルの屋上に登った。
その時反対のビルの屋上に、木杉ガーデンの広告で、植物に囲まれた凛が微笑むものだった。そこには『たとえ、どんなあなたでも自然はきっと受け止める』と書いてあった。
親や周りの人からも期待されての受験に失敗し、ひどくがっかりされ自分の価値はなんだったのか?と思っていた。合格できない自分は生きる価値さえない様な、誰からも受け入れてもらえないと、思い込んだ。少女は凛の笑顔に、なんだか励まされたように感じた。
凛も猛勉強したと、ある雑誌の取材記事で知って、凛は少女の気持ちをきっとわかってくれる人だと思う事が出来た。それがあって浪人生活が頑張ることが出来、無事志望校に合格出来た。『わたしの命の恩人でもある。木杉凛さんの大ファンです』との書き込みだった。
モデルを始めた頃「エゴサは、やめた方がいい。大体ネガティブな情報ばかり目にするから」と仲間に言われ、やらずに居た凛だったので、そういう書き込みを知ることもなかった。
こんな自分でも、誰かに夢や勇気を与えられるのだと気付き、大学を卒業後はモデルからタレント、女優へと活躍するようになった。
取得したたくさんの語学や専門知識の資格が、女優をやる上で色々な役の参考になりオファーも絶えない人気女優へなっていった。
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