29 「それぞれのその後」

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東京から機材を運びながら、トラックやワゴンを使って和歌山の新浜まで移動。 全員が到着したところで、マサねぇがスピーカーを手に、皆に声をかける。 「お疲れ様でした。でもこれからが本番なので、今まで詰めてきた計画に沿って事故のないように仕上げて行きましょう!今回も洋ちゃんに、細かい調整も任せたので、従ってください」 洋平にスピーカーを渡すと 「えー、本日より熊野古道の仕事にかかりますが、自然が相手です。また世界遺産を傷つけないように、機材一つ置くにしても神経を使ってください。 それもあって、今回は僕の友達で植物に詳しく造園業で働く友人が、和歌山にいましたので手伝ってもらうことにしました。桜井春翔君です。よろしくお願いします」 後ろの方で皆の影に隠れて立っていた千鳥も、びっくりしてぴょんぴょん飛び跳ねて様子を見た。 「え?本当に桜井さん?」千鳥は慌てた。 「桜井は和歌山といっても白浜の方で、ちょっと離れているので何日間は僕達と一緒に宿も使ってもらって仕事したいと思います。じゃ、自己紹介して」洋平が促すと 「桜井春翔です。僕の知識が皆さんのお役に立てるといいなと思います。しばらくスタッフとしてよろしくお願いします」 みんなから拍手がわく。 千鳥もあまりのサプライズに ボーゼンと手を叩いていたが、すぐに春翔は千鳥のところに駆けつけた。 「千鳥ちゃん、久しぶり!元気そうだね」 「桜井さん、来るなら来るって連絡してくれたらいいのに、驚きましたよー」 洋平も来て「へへ、ちょっとサプライズにしたかったの!まずは成功?」 「洋さん!」 「え?千鳥ちゃん、野崎のこと洋さんって呼んでるの?」 「あ、ここのスタッフはみんな名前呼びで」千鳥が言うと 「そ、だけど、ドリちゃんは俺が付けた」そう言い笑う洋平に 「じゃあ僕も千鳥ちゃんじゃなくてドリちゃんにするか、確か凛もそう呼んでたな」と春翔が言った。 ドリちゃん呼びを、春翔がしてくれると何だかお互いの距離が一気に縮まった気がした千鳥だった。 「じゃあ俺も野崎は洋平だし、春翔って呼んでいいよ、ドリちゃん」 「……じゃあ春翔さんで」小さな声で呟く千鳥に 「声が小さーい!」と洋平が言い 「春翔さん!」と千鳥が言い直すと 「はい!」と手を挙げる春翔に皆が笑っていた。
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