29 「それぞれのその後」

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熊野古道の仕事は順調に進み、無事終わることができた。 機材の撤収も済み、帰り支度をしていた、野崎は千鳥に声をかけた。 「今日はみんなで打ち上げだな」 「はい」 「もちろん春翔も呼んでるから」 「あ、はい」 微笑みかける洋平は 「もう、またしばらくは会えなくなるし、春翔としっかり触れ合えると良いな」 「え?そ、それはどう言う?」 「ドリちゃん、春翔の事好きなんだろ?」 「え、あ、その、え?」 しどろもどろの千鳥に 「頑張れよ!」と言い、自分の車の方へ行ってしまった。 (きゃー。洋さんが何で?そ、そりゃ好きではあったけど、失恋したし 春翔くんは私なんてただのパンダオタクとしてしか見てないし。こんな私を それ以外で見てくれるわけもないし。まして恋とかしないって決めたし、フラれて傷つきたくないし……) あわあわしている千鳥に 「どした?ドリちゃん?」 飛鳥が声をかける。 「いえ、何でもないです」千鳥も我に帰った。 春翔は撮影が始まるまでの仕込み段階まで、現地で手伝ったが 1週間程で白浜の方へ帰っていた。 その1週間の間もかなり忙しく、千鳥も春翔と話す時間もほぼ無かった。 この打ち上げで、ようやく春翔と話す時間も取れるだろうと思ったのだった。
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