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酔い潰れた千鳥を介抱して、宿まで送った野崎。
次の日、二日酔いの千鳥はやっとのことで起きて来たが、すでにチームのみんなは東京へ出発してしまった後だった。
自分の車で来ていた野崎は、一人残って、千鳥を送ってくれることになったと言う。
「ええ!す、すみません。ご迷惑おかけしてしまいました」
「いや、大丈夫。チームのみんなもかえって反省してて。飲ませすぎたって。だからこれ」
笑いながら野崎が見せた。
コンビニ袋を開けると、二日酔いに効くドリンクや千鳥が好きそうな食べ物がたくさん入っていた。
「これ、みんなから託されたよ。とりあえず、俺がドリちゃんちまで送るよ」
「ありがとうございます。アタタタ」
頭を下げるが、頭痛がする千鳥は
荷物を簡単に詰めて、車に乗り込んだ」
野崎の運転は優しく、千鳥はうたた寝しているうちにパーキングエリアに休憩に入った。
「ドリちゃん。どう?気分は?」
「あ、だいぶ良いです!なんかお腹空きました」
「あはは、それなら大丈夫だな。よし、なんか美味いもの食べよ」
東京に近くなる頃はすっかり体調も戻り、千鳥の笑顔も戻ったと感じた野崎は、ホッとした。
千鳥の家の前に到着。
「あ、ここが我が家です」
「え?ここ?すごいお屋敷じゃん!
ドリちゃんってお嬢様?」
「曽祖父が実業家だったってだけです。今は女3人で細々と暮らしてます」
「へえ」
「あの、良ければ少しひと休みしませんか?長時間のドライブさせてしまったので」
「良いの?」
「と言っても、うちの家で始めたカフェなんですが、良かったら」
駐車場に車を停めて、裏戸から入ると
家のテラスに直接行くことが出来
そのまま元応接室である「AKEBONO」の入り口になる。
案内されて野崎は
「へえーオシャレな和洋折衷のお屋敷なんだな。良いねえ」
「ありがとうございます。元は応接室だったんですが、カフェとして利用してもらってます」
「いや、良いよ、ここ」野崎は部屋を見回して言った。
入ると愁が
「いらっしゃいませ。あ、千鳥ちゃん。おかえり」
「ただいま」
「仕事は無事終わった?」
「はい。今日は派遣先の先輩が和歌山から車で送ってくれました」
「おお、それはお疲れでしょう。どうぞどうぞ」
「お邪魔します」
「先輩の野崎さんです」
「僕は、ここのカフェをやらせていただいてる露木です。千鳥ちゃんがお世話になりました」
「野崎です。いえいえ、彼女頑張ってくれるんで助かってるんです」
「野崎さんは春翔さん、あ、櫻井さんのお友達なんです」
「へえー。春くんの」
「洋さん、こちらの露木さんが以前やってたカフェに、桜井さんがアルバイトしてたんですよ」
「あ、だったらオレ一度寄ったことあります。古民家のカフェ!」
「おお、来ていただいてたんですね」
そこから愁も野崎も話が弾み、食事も喜んでくれた事に、千鳥も嬉しく感じた。
「洋さん、本当にありがとうございました」
「いやいやこちらこそご馳走になっちゃったな。カフェ、良かった。また来るよ」
3日後の派遣終了の日、挨拶をしながら野崎にもお礼を言うと、野崎の方から「俺こそなんかごめん。お詫びに何かあれば何でも協力するから言って」
「いえ、こちらこそ、ご迷惑をかけしてしまいました。こんな私ですが、これからも映像のことをいろいろ教えてください。相談に乗ってください」
それから千鳥は派遣が終わってからも野崎とは、仕事の相談などで連絡を取るようになっていた。まるで兄のような父のような、千鳥にとって心の安らぐ人だなと思うようになっていった。
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