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明美は恋愛で悩み、親友の由恵に相談することにした。二人は喫茶店で待合せ、明美は重い口を開いて由恵に話しかけた。
「今日来てくれてありがとう。電話でも言ったけど彼のことで悩んでいるの」
由恵はしっかりと頷くと、珈琲を口に運んだ。
「明美は大親友だと思ってるから、なんでも言ってね。一応、人生の先輩だしね」
由恵の言葉に明美は張り詰めた緊張から解放されて涙が流れるのをぐっと堪えた。
「それで彼氏のことで何を悩んでるの?」
「もう別れようと思って」
由恵はカップの蓋を指で撫でながら、ため息を吐いた。
「あなたも大変ね。彼のどこが嫌なの?」
「名前とか」
由恵がぷっと吹き出した。珈琲が口から出そうになった。
「名前なんてどうでもいいじゃない! 他には?」
「価値観の違いかな」
「随分曖昧ね、価値観はお互いが擦り合わせていけばなんとかなるものよ。そういえば彼とはどこで会ったの?」
「太平洋よ」
「どういう意味?」
「私が太平洋をクルーズしている時にいたのよ」
「ああ、そういうことね。同じクルーズ船に乗ってたのね」
「そうじゃなくて、海に浮かんでいたの」
由恵の頭の中に大量の疑問符が舞った。太平洋に浮かぶ人間。スキューバダイビングでもしていたのだろうと推測した。
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