35人が本棚に入れています
本棚に追加
1
荒らされた部屋の中に冷たい秋風が抜ける。窓は開いており、使っていない教科書やノート、衣服が散らかっていた。どこかしこもそんな状態で私は呆気にとられるしかなかった。
「なにこれ、どういうこと・・・・・・お金」
足早にクローゼットへ向かい、奥に入れていたカバンの中身を漁る。すぐに、いつも使っているブランドの財布が出てきた。その後、机の引き出しも確認すると、通帳と印鑑も出てくる。
「ここらへんは盗られてないと」
一瞬安心するが、やっぱり不満だ。不法侵入なんて、女子寮ってもっと防犯しっかりしてると思ってたのに。眉をひそめながら、周囲を見ているとドアがノックされる。
「竜菜、入るよ。うわぁ、部屋どうしたの」
「いつから汚部屋女子になったの?」
入ってきたのは麻莉と智世だった。しかし、私の表情からか2人は状況を察するように、笑みが消える。
「もしかして泥棒に入られたの?」
「ど、泥棒」
智世の発言に驚いたのか、隣の麻莉がぼそっと復唱する。
風が抜ける中、しばらく沈黙が続いた。って、ぼんやりしている場合じゃない。
「どうしよう、こういうとき、だ、誰に言えばいいの。警察」
困惑していると、麻莉が口を開く。
「その前になくなったものを確認した方がいいんじゃない? あと、警察より先生の方が先だと思う」
「まぁ、いきなり警察が来たら、美蔓さん困っちゃうよね」
美蔓さんはこのいわゆる寮母さんで、料理が美味しくてキレイな人だ。
いつもお世話になっているから、迷惑かけたくないなぁ。
「それに警察に説明するとき、『誰かに入られた』しか言えないのも」
「確かに。それじゃ、まず部屋を片付けながら盗まれた物がないかチェックしよっか。私たちも手伝いうよ」
最初のコメントを投稿しよう!