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この学校に通う女子の制服が冬仕様になり、すっかり教室内の色味が落ち着いていた。昼のチャイムが鳴り、私は数枚のメモを取り出す。それはスキア様について調査したものだった。しかし、智世の言うとおり、噂以上のことを知っている人に会えなかったのだ。そもそも、この噂の認知度低すぎるし。
「一人くらいは噂について深く知っている人がいると思ったんだけどなぁ」
背もたれに身体を預け、周囲を見ていると廊下側から手招きする人物がいた。私よりもずっと制服をきちんと着こなしたメガネの人。放置するわけにもいかず、私は扉の方へと向かった。
「何かご用ですか?」
「源 竜菜さんってあなた? なんかスキア様を捜しているって聞いたんだけど」
え、色んな人に聞いて回りすぎたかな。冷や汗をかきながらも、そうですけどと答える。
「スキア様に詳しいの?」
「詳しくはないけど、全く知らないわけではない程度です」
我ながら中途半端な回答をしてしまった。しかし、目の前の彼女は話しを続ける。
「なるほど・・・・・・今、忙しい? スキア様について色々聞きたいのだけど」
メガネの女子に尋ねられ、少し悩む。この人もスキア様に興味があるからなにか知っているかも。私は突然現れた女子の誘いに乗ることにした。
昼食を食べるために、庭のベンチまで移動した。そのベンチは校舎近くの花壇とは違い、人気がなかった。そのメガネの女子と一人分席を空けて座る。
「さっきはごめんね。スキア様について知ってる人、初めて出会ったから。私、3年の藪 幸枝」
メガネの女子は申し訳なさそうに頭を下げる。
「1年の源 竜菜です」
自分もお辞儀すると、藪さんは話を続けた。
「実は私もスキア様について調べていたの。私は2年前に部屋を荒らされたんだけど、何も盗まれてなくて。それどころか学校でなくしたはずの両親からもらったシャーペンが出てきたの」
藪さんが話す内容は私の状況ととても似ている。
「そのときからずっと違和感があって調べているんだけど、源さんは何か知っているの?」
「私は荒らされたのが、つい最近なのでまだ情報を掴めてなくて」
そういうことか、と藪さんがため息をついた。こすると彼女は脇に置いていた自分のカバンに手を入れる。そして、一冊のノートを見せてくれた。使い込まれているのか、ノートの端はよれている。
「もしよかったら、見る? 私がスキア様についてまとめたものなんだけど」
藪さんから受け取り、私はページをめくる。最初に書かれていた人は藪さんが1年生だったときに3年生だった人の話だった。その次は卒業生の姉の話。さらには、私と15歳以上離れている人の話もあった。
「こんなにたくさん。すごいですね」
「頑張ったのよ。だって、聞いた本人だけじゃなくて、この学校に通っていた親族友人がいたら教えてって言い回っていたんだから」
藪さんは自慢げに胸を張る。
「でも、皆さん警察に言ってはいないんですね」
「そうみたいね。思い出の物が見つかって、泣きながら感謝した人もいるくらいだから」
一通り読み終えると、私はノートを藪さんに渡そうとした。すると、その上から手を重ね、藪さんが見つめてくる。
「ねぇ、一緒に捜すのはどうかしら? 情報共有する方が効率がいいと思うの」
確かに、彼女の言い分は一理ある。藪さんの情報はとても役に立つはず。
「そうですね。私自身お役に立てるか分かりませんが、よろしくお願いします」
「ありがとう。さっそく源さんの状況も聞いていい?」
藪さんに尋ねられ、私はスキア様に荒らされた日のこと、今日までに集めた情報を伝えた。
「なるほど。荒らされて物が見つかる、という状況は一緒ね」
藪さんがノートに書き込んでいると、校舎から出てきた女子がこちらへ向かって歩いてくる。
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