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 しめきったカーテンの隙間から朝日が差し込む。秋にしては珍しく暖かいなぁ。休日なのに、気分が上がらなかった。  藪さんと出会ってからしばらく経ったが、結果は芳しくなかった。私よりも進んでいたはずの藪さんでさえも、今は行き詰まっている。部屋に入れそうな大人も疑ったが、色んなリスクもあるし目的が不明すぎるし。ずっともやがかかった頭に握りこぶしを作る。  そのとき、スマートフォンから通知の音がした。画面を見れば藪さんからメッセージが送られてきていた。 『今日外出できる? スキア様を知っている人と会う約束をした。  もしかしたら、正体が分かるかもしれない』  藪さんからのメッセージに目を見開く。これはチャンスかもしれない。私はすぐに返信をした。すると、時刻と集合場所が送られてきた。今から1時間後。集合場所も十分に間に合う場所だった。私はクローゼットを開け、休日用の私服に着替える。  準備を終え、1階の食堂を抜け外に出た。スマートフォンの地図を頼りに進んでいく。高校の裏側に回り、普段は行くことのない集合住宅の方へ入っていった。しばらくして、地図が指し示す場所へ到着する。顔を上げると、そこにはレンガ造りの建物があり、カップの看板が立っていた。喫茶店だが、高級感と渋さがあり高校生には敷居が高そうだった。  勇気をふりしぼり、店内に入っていく。店の中ではクラシック音楽が流れ、奥の席に藪さんと1人の女性が座っているだけだった。その女性が振り返ると、顔に見覚えがあった。 「スキア様を知ってるって、美蔓さんのこと?」 「そう。ごめんね、驚かそうと思って内緒にしてもらったの」  眉尻を下げ、彼女は笑う。美蔓さんに座って、と促され私と藪さんは向かい側に着席した。 「今日はお忙しい中、時間をとっていただきありがとうございます」  藪さんが頭を下げ、私も真似するようにお辞儀した。 「さっそくですが、スキア様のこと聞いてもいいですか?」 「スキア様ね。改めて聞くと懐かしいわね。実は私、あそこの卒業生なんだけど、スキア様はとても噂になったわ」  美蔓さんは微笑んだ。おだやかな彼女に対して、藪さんは真剣な眼差しを向ける。それは私も同じだった。 「その正体を知っているのであれば教えてください。それが誰なのか」 「正体を知ってどうするの?」  私の勢いに動じることなく、美蔓さんは質問を返す。 「それは・・・・・・なくしものを見つけてくれたにしろ、不法侵入したことにはかわりありません。他の人たちが感謝していても、私は文句を言わせてもらいます」 「確かに、一理あるわね」  美蔓さんは頷くと、テーブルの上に手を組んだ。
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