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「私にできるのはこれまでよ。スキア様の正体に気づいた後は自分で決めることね」 「今日はありがとうございます」  藪さんが頭を下げ、私もそれに習う。すると、美蔓さんも頭を下げた。 「こちらこそ。話が出来て良かった」  彼女はお勘定を払うと、先に寮に戻っていった。私は席を移動することなく、藪さんと並んで座っていた。やっぱりどうするべきか悩んでいるのだろうか、自分もだけど。しばらくして、藪さんは立ち上がる。 「源さん、私これから行くところがあるから先に行くね。元々勉強教えるって約束してたし」  そう言って彼女も店を出た。その顔は吹っ切れて晴れ晴れとしている。私も店を出て近くの公園に歩いていく。頭では今後のことを考えていた。  スキア様の正体が分かったのに、どこかスッキリしない。それは心のどこかでスキア様はきっと文句の言いやすい他人だと思っていたし、自分の親友がスキア様だという可能性を一瞬で捨てていたからだろう。  その反面、美蔓さんの親友のように、どうしてそんな水くさい真似をしたかも問いたい自分もいて、行き詰まっていた。  頭を抱えていると、真下で鈍い音が鳴る。それはお腹の音だった。こんな状況でも腹が減るなんて。昼食をろくに食べていないとしても恥ずかしかった。そのとき頭によぎったのは、麻莉のおはぎだった。そして、一緒に添えてあった「頼ってもいい」という言葉。  麻莉の行動は彼女なりに考えた結果なのだろう。思い出せば、麻莉だけ持ってない物も割とあったし、格差も感じた。夕飯時に彼女の行動が罪悪感や気遣いからなら自分も信じるべきだ。 「今日の夕飯、なんだろう」  いつもメッセージを送るばかりだったが、なんとなく電話してみる。 「もしもし、どうしたの急に電話なんかして」 「いや、なんとなく。今日は夕方空いてる? ご飯一緒に食べたいなと思って」  改まって話をするのは緊張した。しかし、麻莉はいいよ、といつも通りに答えてくれる。 「あと、スキア様を捜すの、やめにした」 「え、なんで、あんなに必死で捜してたのに」  麻莉はその告白に驚く。正体に気づいたら大変なのに、それでも心配してくれるのね。 「見つからないしどうでもよくなっちゃったんだよね。それよりもどれぐらいで準備できそう?」 「すぐできるよ」  麻莉は落ち着いた声で了承する。私はよろしくと通話をきり、足早に寮へ戻っていく。寮では、美味しい夕飯と日常が待っている。   おわり
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