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「そうはいかない。まず、スマホのロックを外してから渡せ」
和尚はスマホのロックを外して、カバーを開けたまま、畳の上をすべらせた。清がそれを取った。
清はスマホを手にして、和尚を鋭い目で睨んだ。
「まさか、さっき誰かに連絡していたんじゃないだろうな?」
和尚は震えながら、かぶりを振った。世間話をしていたときの清と同一人物とは思えない、凶暴な顔つきに、恐怖心が増すのを感じた。
「まあ、確かめればわかることだ。嘘をついていたら、ただじゃ済まないぞ」
清は和尚に一瞥をくれると、ラインを見た。
「ひえっ」
和尚が小さな悲鳴を上げたとき、清は叫んだ。
「何じゃ、こりゃ!」
そのとき、玄関で大声がした。
「和尚様、松宮です。お迎えに参りました」
和尚は清の顔を見た。清は人差し指を口に当ててささやいた。
「声を出すな。出したら、ばあさんの命はないぞ」
和尚は二度うなずいた。
「和尚様、どこにいらっしゃるのですか?」
「うるさい奴だ。追っ払ってこよう」
清が和尚に「ここを動くな」と言ったとき、和尚は目の前にあった香合の灰をつかんで清の顔に投げつけた。
「うわっ」
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