和尚はフリック入力が苦手

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 今だ! 和尚は立ち上がると、玄関目指して走った。 「待てっ」  その声の直後に、清が転倒した音が聞こえた。 「助けてくれ!」  和尚の姿を見た警官隊が、玄関から突入して、犯人を逮捕した。そのあと、別室で縛られていた小夜が発見された。小夜は疲労していたが、命に別状はなかった。    清と名乗ったどろぼうは、小夜が大金持ちで一人暮らしというのを知って、盗みに入った。ところが、突然和尚が来たので、時間稼ぎをして、小夜から和尚が十三回忌に来たこと、息子が自分と同じくらいの年だということを聞き出し、一芝居打とうとしたという訳だった。    警察での事情聴取を終えて帰宅した和尚は、松宮に頭を下げた。 「今日は君のおかげで助かった」 「いやあ、ご無事で本当に良かったです。それにしても、このラインを見てください」  松宮が差し出したスマホには『助けて 警察 てんわ たらはう』とあった。 「『たらはう』は、さすがにわかりにくかったのですが、和尚様はオの段が苦手だったのを思い出して、『どろぼう』だと気づいたんです。和尚さん、濁音はここをタップします。オの段を出すには、指を下に下げるんですよ」
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