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トゥルニア王の摂政となり、国の政の頂へと到った公ですら目の当たりにするのは初めてだった。
聖別とはその言の葉が表す通り、「聖なるものとして分け隔てられる」ことだ。
以後、けして人の手には触れぬ様に、人間や動物はことごとく殺される。
町や村は完膚なきまで壊され、焼き尽くされる。
例え如何に豊かに実る畑であったとしても、耕されることはなくなる。
そう、もはや此の地上に在るものとしてではなく、天に在るものと見做し切り離す為の行ないだった。
殺され、焼き尽くされる――。
アナテマの有り様、本質をすっかりと思い出したレキシントン公は絆ではなく、左隣の一角を見た。
返す矢の如き鋭さで、一角の銀色の瞳の黒い真芯が公を貫いた。
一角の聖別の印たる炎は、ただの少しも熱くない。
その証に、此のエスドレロンの地に立つ息ある者らを、誰一人として損なうことはなかった。
身に着けている衣服に、僅かな焼け焦げ一つ作らなかった。
今、我が身を取り囲み、目の当たりにしている炎は、夢か幻かと公は思いつつあった。
それ程までに、一角の炎は熱くなかった。
無論、冷たくもなかった。
又、それらのちょうど間でもなかった。
つまりは、何も感じられなかった。
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