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絆は知らない。
まるっきり、知る由もない。
――否、そもそも知ろうともしないだろう。
我が王たる一角を語る自らが、既に崇敬と畏怖との的となっているのを・・・・・・
それは、絆の本意ではないから故にだ。
絆には、そうした欲が一切なかった。
それが、絆が一角の絆である証だった。
レキシントン公は、己の首が動かせる限りの辺りを見渡す。
――そこは、言の葉の通りの『焦土』だった。
元々、エスドレロンの平原に生える草木は、そう多くなかった。
それでも、全くの『不毛の地』ではなかったのだ。
しかし、今はどうだろう――。
公の目に映るのは、かつては、つい今しがたは人や馬だっただろう焦げたものの黒色ばかりだった。
それが、――それを「すっかりと清められました」と、晴れがましく言い放った絆は・・・・・・
公が再び見遣った絆の貌は、姿は端然としたままだった。
己が発した言の葉に、何ら唯一つの誤りもあるとは思いも寄らない様子だった。
噛みしめ、きつく噛みしめた己の奥歯を緩めて、ようやく公は言った。
「――これで此の地は、エスドレロンの平原は、清められたのに相違ないか」
「御意」
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