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   ***  それから約二ヶ月後、後を追うように瑞穂も死んだ。脳腫瘍の発作による痙攣と激しい頭痛に見舞われ、最期は呆気なくパタリとこと切れた。山間(やまあい)の地域で初霜が観測された日だった。  朦朧とする意識の中、瑞穂は思った。  ――あぁ、いよいよか。いよいよ私も終わりなんだ。……嬉しいな。  どこかから彼女が呼んでいるような気がした。瑞穂はそれに身を委ねるようにしてゆっくりと目を閉じていく。母の手の温もり。それが最後に感じた熱だった。  口の端から血が流れ出ていた。とてもきれいな死に顔だった。
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