エピローグ

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エピローグ

 ――ここはいったいどこなんだろう。どこまでも果てしなく続く地平線のど真ん中。右も左も前も後ろも、どこを見ても同じ景色だけが広がるそこに、私は立っていた。いつからとかどうしてとか、そういう細かいところは何一つ覚えていないようだった。  風は吹かず、物音もなく、誰かがいる気配もしない。本当に何もない真っ青な場所。身に覚えのない真っ白のワンピースを着た私は、少しだけそこを歩いてみる。水たまりに雫が落ちた時のような波紋の広がり方はするのに、どういうわけか濡れる感覚がしない。そもそも地に足が着いているようにも思えていない。  それでもしばらく歩き続けていた。不思議な気分だった。ほんの少し足を浮かせるだけで、あっという間にどこまでも続く高い空に浮かび上がれてしまいそうな、そんな高揚感に包まれていた。 「……あれ? 今のって……」  どこかから誰かに呼ばれたような気がした。でも周りを見回しても何もないし誰もいない。聞き間違いか、それとも気のせいか。どっちかで片付けようとしても、そうするのはなんだか違う気がして止まなかった。  何なんだろう、この感じ……。胸の中で静かに燻る、モヤモヤともザラザラとも違う手触り。胸に手を当てて考え込んでいると、またさっきと同じ声が聞こえた。今度は気のせいじゃなくて、確実に「声」だった。
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