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 その怪我をした当時の私は、短縮できるタイムの限界が見え始めていたことでひたすら練習に打ち込んでいた。高校から始めたくせに何をそんなムキになってるんだろうとも思ったけど、たとえそうだとしても妥協して後悔に繋がるようなマネはしたくなかったから、伸ばせるギリギリまで追い込もうと後先考えずに練習をし続けていたらこうなってしまった。今になってみれば、そりゃあ怪我して当然だって話だ。  おかげで当面は練習自粛、療養に専念することを余儀なくされた。その間はサポート役に回るわけだけど、これが結構退屈で困ったものだ。他の部員たちはみんな各々のタイムを縮めるためだとか、それぞれの課題克服のためだとかで懸命に練習しているというのに、私はといえば一人だけジャージ姿でマネージャーの真似事みたいなことをしている。理由が理由だからしょうがない所はあるにせよ、どこか置いてけぼりみたいな気分になっているのは否めない。  とはいえ、してしまったものは後からどう言ったって変わるわけじゃないし、と気持ちを切り替えて療養に専念することにした。  今日はエコー検査の結果を元にした診察と軽いリハビリで終わった。あとは整理券の番号通りに会計を済ませるだけなんだけど、大学病院レベルの規模の大きい病院となれば、待ち時間も当然長くなるわけで。一時間くらい前に診察自体は終わったのに、それから今になるまでずっとロビーのソファに座らされている。毎度のことだけど、この時間が一番疲れるんだよなぁ……と背もたれに体を預けながらぼんやりと思っていた。  
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