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 せめて雲が出てくれてればちょっとマシになってたと思うんだけどなぁ。さてさてどうしたものか。少し途方に暮れたような気持ちでロビーの方に向き直って、すぐに「んん?」と思った。今私がいる場所から数歩ほどしか離れてないソファの下にスマホが落ちていた。  見つけた手前、知らんぷりってのも変だから一応拾ってみる。そのスマホは結構使い古されているようだった。画面にはいくつもヒビが入っていて、プラスチックの透明なケースは色褪せているってレベルじゃないくらい汚れている。  誰が落としていったんだろう。こんなにボロボロになっても使い続けるくらいだから相当愛着があるか、それか物をしっかり大切にできる人だから、落としたことにすぐ気づくはずだ。ましてやこのご時世、スマホなんて財布と同じくらい落としちゃいけないものだ。  とりあえず事務の人に事情を説明して預かってもらった方が良いだろう。そう思ってそのスマホを窓口に持っていこうとした、ちょうどその時だった。
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