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「あの、すいません」  後ろからそう呼び止められた。きっとこのスマホの持ち主だろう。見つかって良かった。 「はい…………って、え?」  振り返ってすぐにそんな間の抜けた声が出た。だって、にわかには信じられなかったんだから。相手の方もまさか私だとは思わなかったのか、声をかけたその次が上手く見つからないとでも言うようにぽかんとしている。  最初に私の目に映ったのは、手首に刺さった細く透明な点滴の管だった。それからその先の点滴スタンドと、この病院の病人服。袖の先からスラッと伸びている細い腕が最後に目に入ってきた。  私は彼女を知っていた。なんでって、同じクラスに在籍しているクラスメイトだからだ。でも、なんで彼女がそんな格好をしてここにいるのかまるで分からなかった。今までまともに話したことが無かったにしろ、クラスメイトの一人が明らかに病人だと分かるような格好をしていれば誰だって驚く。それに彼女は、傍目から見ても体の具合を悪くしている風には見えなかったし、何より入学してから夏休みに入るまで毎日欠かさず学校に来ていた。それがあって余計に驚いた。
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