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「相沢さん、なんで病院にいるの? それにその格好……」
いくら高校一年生とは言っても、三ヶ月もあれば顔と名前の一致くらいできている。目の前の彼女は相沢瑞穂さん。良くも悪くも目立たないクラスメイトというのが、私が抱く印象。友達は別のクラスなのかそれともいないのか、昼休みや放課後に二人以上でいるところを見たことがない。良く言えば「大人しい」だし、悪く言うなら「陰キャ」。そんな感じの子。
そんな相沢さんは、少し伏し目がちになりながら「参ったな」とでも言うようにぎこちなく笑ってみせた。
自動販売機で紙パックのオレンジジュースを二つ買う。先にソファに座ってもらっていた相沢さんは、さっき私が手渡したスマホを持ってつま先を見つめていた。
「良かったら、飲む?」
「あ、うん。ありがとう」
相沢さんが慣れた手つきでストローを紙パックに刺してオレンジジュースを吸い上げる。私はそんな彼女の隣に座って、同じようにストローを紙パックに刺した。一口飲もうしたけど、その直前で今の相沢さんの現状が気になってしまう。
「ねえ、相沢さん」
「うん?」
彼女がストローから口を離す。「どうかした?」
「左手のそれ……」
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