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 どんな言葉の選び方をしても不正解のような気がして、そんな風にしか聞けなかった。だけど相沢さんは、意外と素っ気なく思うくらい明るく言った。わざとそう振る舞っているようには見えなかった。 「コレ? やっぱり気になるよね」  本当なら言わないつもりだったんだけど、今さら隠してもしょうがないか。そう一息ついたあとで、彼女は自分の頭を指さす。 「私ね、ココに腫瘍(しゅよう)あるの。ステージ4の末期」 「……っ!」  息を呑んだ。周りの音が全て消えてしまったような感覚になった。まさかそんなに酷いものだったなんて思いもしなかったし、それに反して相沢さんが至って普通そうにしているのが不思議で仕方なかったのもある。 「先月までは特に何とも無かったんだ。でも、夏休みに入った瞬間にどんどん崩れていって、気が付いたらこんなに悪化してた。先生が言うには、余命半年くらいしか無いんだってさ」 「………………だったら、なんでそんなに平気そうなの?」 「そう見える? これでも結構深刻に受け止めてるつもりなんだけどなぁ。だけど強いて言うなら……今さらどうにもならないし、だったら大人しく死んでやろうって投げやりになってるのかもね」
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