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 夏休みに入って一週間も経たない、七月二十七日。本来なら私が所属している水泳部の部活がある時間帯に、私は一人で大学病院に来ていた。つい二週間くらい前に足を怪我してしまって、その定期健診のためだ。  水泳は身体にのしかかる負担は少ないけれど、それでも絶対怪我をしない競技なわけじゃない。そもそもスポーツであればどんな競技でも少なからず怪我をする可能性はある。  私が負った怪我は、「ブレスストローカーズニー」というもの。カタカナで言われると何のことだかまるで分からない。私も初めて聞かされた時は、頭の上にはてなマークが三つくらい浮かんだ。例えとかじゃなくて、結構ガチで。  ブレスストローカーズニー。やけに難しく聞こえるかもしれないけれど、要は平泳ぎを得意とする選手の膝の、内側の靭帯が炎症を起こすというものだ。日本語で言うと「平泳ぎ膝」というのも、主に膝回りの筋力や柔軟性が足りないと起こりやすいものらしいというのも、病院でそう診断された日の夜に調べて知った。  私が見たウェブサイトには、炎症防止策として「長時間の練習を繰り返さないこと」と「陸上トレーニングで脚の筋肉を鍛えること」が書かれていた。だけど私の場合、前者の方がまるで出来ていなかった。
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