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混乱する私に先輩は勝手に話を進めていく。
何の合言葉にしよっかぁ、1人で勝手に頭を悩ませている。
なんなの?この人……
由梨ちゃんはクスクスと微笑んでその様子を見ている。
シマッタ、
不意打ち過ぎて私と由梨ちゃんの違いを見せすぎたような気がした。
どうしよう…
別に先輩に対して何をするでもないが、勝手に焦りがこみ上げてきて、
「決めた!ねぇ、耳貸して」
そう言って先輩は私の耳元で小さな声で囁く。
「山、と言ったら川だけど、それじゃ普通過ぎるから、山登りって答えて」
「は?」
呆気に取られて、また素が出てしまった。
「忘れないでよ、藍梨ちゃん」
ニッコリと笑顔を作る先輩、そして今度は由梨ちゃんへと視線を向ける。
「でもって~、う~ん。そうだな、よしっ、決めた!耳貸して」
由梨ちゃんへと近づく。
私は制止しようと思ったけれど、由梨ちゃんが自ら身体を先輩のほうに寄せる瞬間を見逃さなかった。
え……
由梨ちゃんは先輩を受け入れようとしていた。
コソコソコソっと先輩が由梨ちゃんに耳打ちをする。
反応が遅れてしまった。
「忘れないでね、由梨ちゃんも」
先輩がニッコリと笑顔を見せる。
由梨ちゃんは――、一瞬驚いた表情を見せたけれど、すぐに笑顔に変わる。
コクリと頷き、「面白い先輩だね。藍梨ちゃん」
と言って私を見た。
その瞳が揺らめいたように見えたのは、きっと私の気のせいではない――、
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