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先輩が去った後、私はすぐさま由梨ちゃんに聞いた。
「先輩、合言葉何て言ったの?変なのじゃなかった?」
軽い調子で聞いたつもりだった。でも、
「教えたら秘密の合言葉にならないでしょ」
由梨ちゃんは教えてくれなかった。
「え、なんで?私のも教えるから教えてよ」
由梨ちゃんの瞳がゆらゆらと揺らめく。
「ダメだよ。先輩と約束したからね」
「え~、なんで~」
甘えてもダメだった。
由梨ちゃんにしつこくおねだりしても、由梨ちゃんは結局最後まで私に合言葉を教えてはくれなかった。
そしてその数日後、由梨ちゃんと先輩が楽しそうに中庭で会話しているのを見かけた。
「え……」
その時私は田邊君と一緒にいたので、そこに割り込むことはできなかった。
私の視線の先を追うようにして田邊君が由梨ちゃんに気が付き、
「あれ、由梨ちゃん、彼氏できたの?」
と言った。
彼氏……、第三者から見たら彼氏に見えるんだ……。
確かに楽しそうに笑っている。あんな顔しばらく見たことがなかった。
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