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 だけど。  別にいっか。モブでも、井戸でも、塩対応でも。ここで毒吐いて、藤野がまた、外でニコニコしていられるんなら。  そんでたまに、演技でも忖度でもなく、ああいう顔で笑ってくれたらさ。  俺はそんなふうに思って、藤野がぼこぼこにしたクッションを窓辺に置き直した。  窓から道路を見下ろすと、冬の短い夕方は、景色が全部オレンジ色で。  同じ色に染まった藤野のふわふわの髪が、左右に揺れて、だんだん遠くなっていく。  がんばれ。  自然にそんな言葉が胸に湧いてきて、何目線だよ、って内心で自分にツッコミながら、俺は(から)になったカルピスのグラスを二つ、お盆に乗せた。 【了】
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