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1.
「おはよー、はるひ! 今日もほっぺぷにぷにだねぇ」
誰だってダルい月曜の教室。一軍女子の相澤が、藤野はるひの頬をつついた。
「あはっ、あいちゃんおっはよ〜! 今日も寒いねぇ」
藤野がパーにした両手を、笑顔の横で振る。相澤は藤野のえくぼを両手でつまんで、ビヨーンと横に伸ばした。
「ほんっと、はるひのほっぺは癒されるわぁ」
「いひゃいよぉ、あいひゃ〜ん」
「朝からうちの親ウザくてさぁ、ガチギレしたわ。はるひん家はいつも平和でいいよねぇ」
「えへへ〜」
「悩みなくてうらやましーわ」
ニコニコしている藤野を横目で見ながら、俺は自分の席で小さくため息をついた。
今日はまた、荒れるだろうな……
「ちょっと吉友! 何見てんだよ!」
相澤ににらまれ、慌てて目を逸らす。文庫本を開く俺を指差して、相澤が藤野の耳に口を寄せた。
「吉友さぁ、割とこっち見てると思わない? はるひのこと好きなのかもよ」
「あたしじゃないよ〜、たぶんあいちゃんのこと好きなんだよ〜」
「えー?」
「だって、あいちゃんかわいいも〜ん」
また絡まれたら面倒だから、見ないけど。相澤がどんな顔をしてるのかは、簡単に想像できる。自分がかわいいことなんて、自分が一番よくわかってるよな。
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