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 人間、緊張しすぎると腹を壊すらしい。  藤野がうちのトイレに入ってる間、俺はキッチンで、二人分のカルピスを作っていた。  カラン、コロン  涼しい音がして、見た目は映えるけど。腹痛の女子に氷はダメかもと、箸でかき回しながらふと思ったとき。 「トイレ、ありがと……」  気まずそうに顔を伏せて、藤野が部屋(ダイニング)に入ってきた。 「あ……うん」  こういうとき、何て言ったらいいんだろう。いや、たぶん、何も言われたくないよな。  俺はグラスを一つダイニングテーブルに置いて、自分は壁にもたれて立った。 「乳酸菌、いる?」 「……ありがと」  藤野が引いた椅子が、床をこする聴き慣れた音がして。それがすごく、不思議な感じがした。  人が来ることなんか想定してなかったから、いつも通りにプリントとかティッシュ箱が雑然と乗った、うちの茶色いテーブルで。  藤野が、真顔でカルピスを飲んでいる。 「吉友」  気がついたら、じっと見ちゃってた。もう遅いけど慌ててうつむいた俺に、藤野が低い声でぼそぼそ、聞いた。 「あのクリニックの医者(せんせい)、吉友のお父さん?」 「違うよ、母親が受付でパートしてるだけ」 「ふうん」  しばしの沈黙。  間がもたなくてちょびちょび飲んでたら、俺のグラスはすぐ氷だけになってしまった。 「何にも、聞いてないよ俺。患者のことは、家族にも話したらダメだからって」 「あたしが患者だってことは、聞いたんだ?」 「う……」
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