3.

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 それは。だけど。てゆうか。  何にも言えなくて、意味もなく目だけキョロキョロしちゃって。答えなんか書いてないうちのダイニングに、藤野の長いため息が響いた。 「医者(せんせい)に、話聞いてもらってるだけだよ、あたし。友達にも親にも言いたくないこと、吐き出せる場所だと思っていいよって、言われたから」 「そっか……」  友達にも親にも。そう聞いて、なんだか息苦しくなった。藤野はもしかして、家でもニコニコしてなきゃなんないのかな。 「あたしのこと、痛いやつだと思ってるでしょ」 「思ってないよ」 「嘘つき」 「びっくりは、したけどさ」  元気なやつだと、思ってたよ、今まで。みんなと同じように。  ごめん。  悩みのないやつなんて、いるわけないんだよな。 「すごいじゃん。藤野めっちゃ、がんばってんじゃん」  謝るかわりに、思ったことを素直に伝えたら。 「吉友なんか、モブのくせに……生意気」  その言い草にはさすがに、モヤっとしたけど。  顔を押さえてうつむいた藤野の肩が、震えてて。この小さい肩に、いっぱいいっぱい、いろんなものが乗っかってるんだと思ったら、しょぼいモヤモヤなんか消えてしまった。  気の利いたことは、何にも言えなかったけど。  おそるおそる伸ばした手は結局、藤野のふわふわの髪の毛には触れなかったけど。  たぶんそれでよかったんだって、今は思ってる。  それから藤野は、放課後ときどき、(うち)に来るようになったんだ。
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