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4.
人間、恥を晒した相手には、とことん図々しくなれるものらしい。
最近の藤野は、当たり前みたいに俺の部屋に上がり込み、勝手に暖房をつけて、毒を吐いたりクッションを殴ったり、カルピスを飲みながら漫画を読んだりしている。
無表情、ときどき、舌打ち。時により、大荒れ。
話しかけてもすごい塩な返事しかないから、話なんかほとんどしない。一時間くらい居て、気が済んだらぺこりと謎のお辞儀をして、帰っていく。
それで翌日には、別人みたいに教室でニコニコしているんだ。「癒し系」なんていう、偽りのポジションで。
「そろそろ帰ったら?」
嵐がおさまった頃合いを見計らって、俺が声をかけたら。本棚の漫画を物色していた藤野は、無表情で振り向いた。
「は?」
「うちの母親も帰ってくるし」
「へー」
「鉢合わせたら嫌だろ?」
「別に? てゆうかこないだ玄関の前で会ったし」
「え」
「マサキと仲良くしてくれてありがとう、って言われたよ」
「マジか」
それ絶対誤解されてるだろ。俺と藤野は付き合ってるわけじゃないし、仲良くもないし、下手したら友達でもなくて。藤野にとって俺は、「王様の耳はロバの耳ー!!」ができる井戸、みたいなもん。もしくはそれ以下の、井戸の管理人? なのに。
「……ふぅん」
俺の困惑に、藤野は口をへの字に歪めた。
「あたしと仲良くしてると思われたら、嫌なんだ?」
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