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「や、俺は別に」
「別に?」
「嫌とかじゃ、ないけど」
「へー」
どうでも良さそうな声を上げた藤野が、半目でじっと、睨んできて。
「吉友がもしリア充になったらあたし、爆撃するからね」
「爆撃!?」
彼女なんかできる見込みも、そもそも好きな子もいないけど。百パーセント冗談とも言い切れない不穏な予告に、冷や汗が流れる。
「わかっ、た」
他に答えなんか思いつかなくて。思わずうなずいた俺に、藤野がプハッと吹き出した。
「わかったんかい!」
「えっ」
わ、笑った……
教室でのニコニコとは違う、自然にこぼれた感じのそれは。もしかしたら藤野が初めて見せた、本当の笑顔かもしれない。
そう思ったら、俺は不覚にも、何も言えなくなってしまって。
「乳酸菌、ごちそうさま」
スカートの裾を直しながら立ち上がり、ペコッと頭を下げた藤野を、引き止めることもできなかった。
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