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Ⅳ
「理穂ちゃん」
俺が呼ぶと、彼女は振り替える。黒い髪が、肩にかかる程度まで垂れている。
「わあ、宗太くん。こんなところで会えるなんて」
「ね、偶然だね」
「昴くんに、色々言われそうだね」
あははっと、二人で声を合わせて笑う。
最初は、平和だった。昴くんと俺と理穂ちゃんの三人で、ただただ楽しく遊ぶ毎日。ずっと続くと思っていた。
すべてが崩壊してしまったのは、小学三年生の夏。
「あのね、宗太くん、昴くん」
いつもよりも少し上擦った声でそう言う理穂ちゃんに、昴くんと揃って首をかしげると、彼女は言いにくそうに唇をすぼめて話し出した。
「私……。大阪に行くんだ」
「え!」
横の昴くんが、すっとんきょうな声を上げる。俺も、声こそ出さないものの、内心では動揺の色が濃い。
それに、理穂ちゃんが慌てたように付け足した。
「あ、お父さんの転勤でね。お父さんの仕事場が、大阪の方にあるんだって」
「いつ、戻ってくるの?」
今度は俺が尋ねる。理穂ちゃんは視線を自身の手に落とし、寂しげに俯いた。
「ごめんね、もう会えないんだ。戻ってくることは、ないんだって」
「……思いもしなかった。ずっと一緒だと思ってた、僕たち」
昴くんが、どこか悔しそうに唇を噛む。そのあと、大声で泣き出した。
「行かないでよ、理穂ちゃん。行かないでよ……」
「そうだよ。理穂ちゃんだけでも、ここにいて」
「ごめんね、本当にごめんね……」
家が隣だった俺たちは、理穂ちゃんが大阪に行ったことで、引き裂かれてしまった。理穂ちゃんがいなくなると、自然と昴くんと話すこともなくなり、中学には男子校を選らんで遠くへ行ってしまった彼とは、もうそれっきり、連絡を取ることがないままだった。
ガタガタ、パソコンをいじり、ひっきりなしに検索をかける。皮肉なことに、求人を探しているうちに、パソコン操作はお手の物になっていた。
一通り調べ終わると、パソコンの電源を切り、ふーっと息を吐き、そばに置いていたお茶のカップに口をつける。
杉村理穂の父親は、大学の教授をやる傍らで、心を持つアンドロイド製作を行っていた。非公認の組織。彼は最初のうち東京で仕事をしていたが、手狭になり、広い物件がある大阪に引っ越した。そこで研究を重ね、八年の年月を経て、ついに目的のアンドロイドの製作方法を発見した。
すでにいる人間の肉体を改造することで、それは実現した。その場合出来上がったアンドロイドが持つ心は、人間の頃と同じらしい。
そして彼はそれを、娘の体を使うことによって成し遂げた。娘の体を改造し、ついに出来上がったアンドロイドだったが、それは失敗作となる。失敗したことで、彼の製作計画も打ち切りとなった。
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