140人が本棚に入れています
本棚に追加
ハッとして目が覚めた。
気がつくと、僕はいつもの課長のデスクで、山積みになった企画書の束に突っ伏して寝ていた。
辺りはすっかり真っ暗で、照明は僕のデスク周辺しか点灯していない。
残業中にちょっと仮眠するつもりが、いつの間にか本気で寝ていたらしい。大量に有給休暇を使ったツケが回って、納品が間に合わなくなりそうになったから、ここ最近毎日残業していた。そうしたら、うっかり。
……それにしても、まさかの夢オチ。
なんか、恥ずかしい。願望ダダ漏れだった。
夢の中でも小鳥遊さんのウェディングドレス姿は綺麗だった。
やっぱり結婚式はチャペルに限る。
パソコンで式場を調べてみようかな、と僕はブラウザを立ち上げた。
「チャペル」で検索すれば、すぐに個性的な形の教会が次々と見つかる。
こういうの、見ているだけで幸せになるな。
「あーあ。さっきの夢が正夢だったらいいのに……」
思わずひとりごとを呟いた、その時だった。
「どんな夢を見ていたんですか?」
僕の隣に天使が現れて、パソコンの画面を覗こうとした。
って、メガネを外した小鳥遊さんだ!
「うわあっ」
僕は驚いて変なところをクリックしてしまった。
リンク先のピンクな広告漫画が画面に出てきてさらに焦る。
「ち、違うから! これ、違うからね!」
「何のことです?」
間一髪、画面は見られなかったらしい。
小鳥遊さんは「変な課長」と言ってクスクス笑っている。
「小鳥遊さん、どうしてここに?」
「差し入れを持ってきました。二人で食べませんか? 煮卵のばくだんおにぎり」
「煮卵まるっと一個入ってるの⁉︎」
小鳥遊さんの不思議おにぎりが出てきて僕はキュンと幸せな気持ちになる。
二人して職場復帰できて、こうしてまた課長と部下として働けるようになったことがまるで夢のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!